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医師を目指す方へのメッセージ

高崎総合医療センター

病院正面 高崎総合追加医学部医学科をめざす高校生の職場体験セミナー

 今年も医師をめざす高校生によるセミナーを高崎総合医療センターにおいても開催させて頂き感謝しております。個人的な話になってしまいますが、何よりも、初めての経験に対峙するときに高校生の好奇心に満ちた驚きの表情には、物凄い力があり、一緒に過ごしていると私自身の力に変わっていきます。加えてこれからの群馬、そして日本社会を形成していく人材との出会いは、私自身興味津々であり、頼もしく感じることができます。同セミナーを企画する群馬県にあっては、今後においても是非このような文化を群馬県で育成頂ければと切に祈っております。
 さて、今年は人々の生活と医療との関わりについて考えてみたいと思います。病院(医療機関)に勤務する人々以外に、「病院に行きたいですか?」と問うたならば、答えはどうなるでしょう。正直言って行きたい人は殆ど居ないと思います。でも、体調がすぐれない時、具合の悪い時なら、答えは逆で、「すぐ病院に行きたい」「早く連れてってくれ」となるのが日本の通常ですね。人が生活を送る上で元気な時に行きたくない場所の統計を取ってみたら、病院はかなり上位に位置すると思われます。何故でしょうか?まずは必要がないからです。世の中病気の人ばかりではありません。でも病気の予防や病気の早期発見を目的に、検診などで病院を受診される人も多いのが現状です。これは元気な人でも強く推奨されるものであり、ようやく日本のがん検診も目標とされる50%に届こうとしています。その他にも、病院へ行きたくない理由、皆さんも思い起こしてもらえば解るはずです。病院に行けば、受付が面倒くさい、初めて会う人ばかり、採血の針が怖い、病気を知らされたら残酷、いったいいくらお金がかかるの、といった具合に、とても家族でディズニーランドへ行ったり、好きな人と映画館に行ったりするのとは逆の感情であなたの心は占められてしまうはずです。つまり人々の生活において病院は「できるならば行きたくない場所」であり、多くの人々はできるならば薬を飲むことなく生活を送りたいし、手術なんて怖くて一生したくないと思うのが通常だと思います。そのような場所が、君達高校生が望む医療の現場となります。普段だったら優しい人も、病気が解って不安になったり、心配したりすると気が立っているかもしれません。全ての病気が一定期間、治療を行えば治るということではなく、薬の服用を継続したり、定期的に検査を行ったりしなければなりません。また医師はしばし残酷な病気や病状の説明、宣告を患者や家族へしなければならないのです。どうでしょう、求められるのは知識や技能だけではなさそうですね。特に現代は高齢化を迎えている時代であり、体調を壊されたお年寄りが入院してきた際などは、退院後自宅や施設に戻られた際には、望まれる生活のデザインを医療、介護、看護を通じて提示しなければなりません。このように高齢化の時代の国家的な取り組みとして、現在最有力であり、実現へ移されているのが「地域包括ケア」という地域モデルであり、お年寄りが生活されている家を中心として、医療、介護そして生活支援が個々のお年寄りに提供される環境造り、そしてお年寄りの生活を支える人々の育成です。このように地域に住んでいる人々が安心して安全に生活を送っていくために、医師の行う仕事は多岐に渡り、医師が個々に求められる想像力は大きなものです。社会における多くの人の営みを知らなければならず、その想像力を以て医師は人々の生活の一部を支えていきます。そしてこれらの事業は、もしもの時への備えでもあるのです。出来れば行きたくない病院へ人々が行かないで済むように。

総合診療科: 佐藤 正通

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