公立富岡総合病院
高校生の皆さんを病院で迎えるこのセミナーも早5年目になるのでしょうか。途中からこの企画のお手伝いをさせていただいているこの身にはあまり実感はありませんが、地域医療推進研究部門の時代から関わっておられる職員の皆さまにしてみればひとしおかと存じます。
さて、高校生の皆さんにとってみれば、社会科見学は非常に興味があるのではないかと思います。某テーマパーク(低学年向けですが…)のように体験する機会は実生活ではなかなか無いでしょう。
セミナー(見学)といっても、ただ受け入れればいいというものでもありません。どの様に院内を巡ればいいか、期待されていることはなにか、どうしたら喜んでもらえるか、皆さんを受け入れる施設の方は業務の傍ら悩んでいるはずです。最近は体験できるモノが人気なようで、当院もどうしたものかと悩みました。このセミナーはサービスを提供する側を垣間見られる貴重なチャンスだと思います。
サービスを享受する側の皆さんにとっては世の中の仕組みは見えにくいのではないでしょうか。缶コーヒーのCMで言っていた『世界は誰かの仕事でできている』とは正にそのとおりかと思います。
世の中には色々な働き方があります。カレンダーどおりの暦日で働く人もいれば、3日働き2日休みというようなシフト制で働く人もいます。半年間は海の上で過ごし、3か月は陸の上というような方もいるでしょう。つまり皆さんが休みで寝ている間も外の世界では働いている人がいるのです。
病院もしかり。総合病院などは休日でも救急外来を実施しています。そこでは医師・看護師・検査技師・放射線技師・薬剤師・事務などからなる多くの人間が働いています。
人が休んでいる時間に働くことはハードな事です。ともすれば休みたい、遊びに行きたいと考えがちでしょう。けれども皆さんが目指している道は、人が休んでいる時に働く職場なのです。
休日どこかに出かける時、皆さんはどう行きますか。
電車で行くのであれば、駅員に運転士と働いている人がいます。車であれば高速道路の料金所の係員やパトロールしている警察官がいますね。皆さん仕事に責任があります。
駅で切符が買えなかったら。電車が出発しなかったら。高速道路の料金所が開かなかったら。道路上の故障車がそのままになっていたら。働く人の責任は大きいのです。
病院でいうと責任もさることながら、より身近に命の重さが感じられます。どんな所で怪我をしようと、必要があれば運ばれるのは病院です。最終的に行きつくところは病院なのです。
その重み、想像できるでしょうか。
私たちが期待することは、その重みが感じられる様に、耐えられる様になってくれること。詰まる所、人の為に働くとはそういう覚悟が必要なのではないでしょうか。自分の仕事でないと言って周りを顧みなければ、結局何もできません。
本来この欄にメッセージを送るのは院長や副院長だと思います。けれどもこの度末席ながら筆を執ることになりました。皆さんとそんなに歳が離れていない先輩からと思っていましたが(そうでもない)、こんなことを思ってしまう私はもうおじさんなのかもしれません…。

医学部医学科をめざす高校生の職場体験セミナー




