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医学生へのメッセージ

館林地区消防組合

館林地区消防組合医学生のための地域医療体験セミナー in 館林
 日本一暑い街館林市での研修、大変御苦労さまでした。当消防は館林市・板倉町・明和町・千代田町・邑楽町の1市4町から構成される管内人口15万弱住民の安寧を職員191名で守る組合消防です。
 当消防組合の昨年の救急業務の運用状況は出動件数が5536件、搬送人員4967人であり、住民の約30人に一人が救急車を利用したことになります。また搬送先病院では当地域の中核病院である館林厚生病院でも医師不足の影響を受け、いくつかの診療科の撤退制限等で、管外病院への搬送が多くなっている現況です。
 消防救急のあらましを紹介しますと、平成3年に救急救命士法が制定され、日本全国の消防本部が救急救命士の養成と高規格救急車の導入に力を注ぎました。それ以前の救急業務は、どちらかといえば応急処置よりも病院に速く搬送することを主眼にした運び屋的要素の高い救急隊でした。現在の消防救急は救命処置に関し、医師による指示・指導・助言、また事後における救急活動の適否の判断などを行う事後検証、そして再教育の三つを基本とするメディカルコントロール体制が、県そして地域で構築されたなかで、静脈路の確保や薬剤投与、器具を使った気道確保といった特定行為といわれる医療行為を救急救命士が実施できるようになり、同時に救急隊には現場にいない医師に傷病者の状態を端的に伝え、指示された処置を的確に実施できるスキルが求められています。近年ではさらに処置の拡大が期待される状況にあります。
 今回の研修では、消防が行う救命に関する一連の対応について受講して頂きました。まずは119番受信時における救命処置に関する口頭指導を実施していること、しかしながらなかなかバイスタンダーの処置実施率が上がってこない現状であること。救急事故内容により、傷病者にとって最善な出動隊形、例えばポンプ隊や救助隊との連携出動、ドクターヘリやドクターカーそして群馬DMATの要請等、受信時、また現場指揮隊の判断で選択対応していること。救急隊長が救急現場の緊迫している状況の中で観察を行い、受傷機転や発症過程を聴取し、病院への収容依頼を実施するなかで、傷病者の関係者等と医師との板挟みになり苦労していること等、皆さんには把握して頂いた上で、救急救命士が現在実施できる全ての救命処置を網羅したシミュレーションを見て頂きました。 
 皆さんは、今まで受講された地域医療体験セミナーで、医療は医師看護師さん等をはじめとする多くの医療従事者の方々が、医療機関と連携を取り合うことで成り立っていることを学ばれたと思いますが、消防救急が傷病者に最初に接する術者の一機関として、その一翼を担っていること、また課せられた任務にも病院検索に代表される苦労が消防救急に存在することを理解して頂けたものと思います。
 消防救急は、これからも地域医療の末端で頑張っていきます。皆様におかれましても、消防救急の良き理解者・指導者・相談役となって頂くと同時に、地域医療の連携そして医療が充実した街づくりにも貢献して頂ける医師となられることをご祈念申しあげます。

救急総括: 柳沢功一

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