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医師を目指す方へのメッセージ

公立富岡総合病院

公立富岡総合病院

 群馬県地域医療支援センターが中心となって医師を目指す高校生に、県内の臨床現場を体験できるシステムを構築し実践されていることに、敬意を表したいと思います。
 これから医療を目指す高校生に多少の参考になればと思い、原稿を進めます。
 “医療とは哲学に裏打ちされたものでなければならない” このことが皆さんに伝えたい最大のメッセージです。このことについて少し述べたいと思いますが、その前に私が勤務している公立富岡総合病院について紹介します。当院は富岡市と甘楽町でつくる医療事務組合によって運営され、公立七日市病院とともに500床の病床を有する富岡二次医療圏の中核病院です。群馬県の9つのがん診療拠点病院の一つであり、年間がん登録924件、手術件数3097件(いずれも平成27年度)でした。最大の特徴は、1人の患者さんの最初から最期まで切れ目のない医療が提供出来ることであり、緩和ケア病棟、シルバーケア病棟の併設もあって、両院あわせて院内で805人、在宅でも24人(いずれも平成27年度)の看取りがありました。分娩数は539人であり、まさに揺り籠から人生の旅立ちまで一貫した医療の提供に寄与していることを理解していただけると思います。また平成28年度にはPET-CTの導入工事が始まり平成29年4月の開設に向けて進んでいます。
 さて、本題に戻りますが、昨今の様々な医療上の問題や事件は何故起こったか?その理由として医療における哲学の軽視があったと思います。医療が製薬業や医療機器産業によって経済活動の様相が強まり、さらにマスコミによって煽られて、その本質を見失いつつあると危惧しています。医療が産業となり経済活動となってしまいました。
 医療とは何か?医療は何のためにあるか?という出発点、原点を常に意識することがきわめて重要です。医療は健康な生活を送るため、病気の苦痛を最小限に抑えるため、そして本人の意思を尊重した人生の最終段階を支えるためにあるのです。
 この基本を忘れないことが極めて重要です。これから医療を目指す高校生にはしっかりと心の中に植え付けて欲しい概念であり哲学と思います。
 さてもう少し文字数に余裕がありそうですから、私の学生時代の思い出を一つ。机の上の勉強もしたように思いますが、記憶にあるのは同級生たちと旅行や山登り、飲み会をよくしたことです。風邪を引いてもお酒を頂いて運動で汗を流せば治ってしまう体力、そんな飲み会では真剣に将来の医師像について議論をしたことです。医療で経済活動を目指す人や教授になるぞ、と話していた人もありましたが、真摯な医師像について熱い語りの方が記憶に残っています。そしてそのように語り合った友人とは40年経た現在でも同じ話が出来ます。学生時代の友は一生ものです。皆さんもそんな意味で熱い学生時代を経験して欲しいと切望します。

院長: 佐藤 尚文

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