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医師を目指す方へのメッセージ

公立富岡総合病院

医師をめざす高校生や医学部学生の皆さんへ公立富岡総合病院

 まず初めに、次の世代の医師育成のために群馬県地域医療支援センターの皆様の日夜の努力に対して敬意を表します。
 西毛地域に位置する富岡地域医療事務組合は、公立富岡総合病院、公立七日市病院を有し地域医療を行っています。少子高齢化と医療費増大に対する対策として、行政府主導の制度変革が診療報酬改定という形で2年毎に行われてますが、人口減少が著しい非都市部に位置する当院では、真っ先に変革を行わないと病院の存続をも揺るがしかねない事態にあります。時代の変化、社会環境の変化が著しい事態において、同時に国民の意識変革もきわめて大切な問題と思います。何でもかんでも検査をし、できる治療行為は何でも行うとするのでは、何のための医療かが見えません。適切な医療とは、公平な医療とは、そもそも医療は何のためにある?という視点で、国民的なコンセンサスを作ることが必要です。40年この業界に携わってきた1医師としてこの国民の意識改革こそが、もっとも大切だと考えています。そんな想いをめぐらせながらこれからを支える若き高校生や大学生にメッセージを送りたいと思います。
 最近AI(artificial intelligence)という言葉をよく耳にし、またAIが発達すると無くなる職業は?などという記事を時々見かけるようになりました。AIでコントロールできる機器やロボットの方が人間よりも正しく速くできるようになると、その職業は不要になって失業しますよ、というのが多くの記事の趣旨になっています。失業するか否かは別問題として、AIが有効と思われる分野は医療にもあると思います。たとえば病理診断や画像診断、また個人データや検査データをAIに入れると、診断候補とそれぞれに対応する薬品の種類と量が出てくることは比較的容易でしょう。AIと対話しながら精神疾患も診断される可能性があります。一方外科的手術や手技と、生活環境、社会的環境を考えて適切な医療を提供する総合診療医の仕事においては、当分の間、AIよりも人間の方が得意だと思われます。いずれにしても大切なことは、知識や技術の部分から、感性や哲学的な要素が、人間の得意な分野であるとの認識を持ってAIを活用しながらの医療に変わっていくのが理想的です。そういう意味で、これからの医療を担う若い人たちには、是非この感性を磨き哲学を創りながら成長してほしいと切望します。人間には誰しも、目立ちたい、人のしていない事をやってみたい、自分が満足したいという欲望があります。しかしこれらの欲望は、臨床現場ではきわめて有害な雑音です。この欲望をいかにコントロールして本当の意味での患者のための医療を行えるかは、その医師の感性と哲学にかかっているのです。

院長: 佐藤 尚文

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