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医師を目指す方へのメッセージ

伊勢崎市民病院

医学部進学をめざす高校生の皆さんへ伊勢崎市民病院

 全国的に、特に群馬県では医師が不足しています。医療を必要とする老齢な人が増えていること。また、医学の進歩とともに新たな治療手段が生み出され、より複雑で高度な医療が求められるようになったこと。これらの理由で、多くの医師が必要なのです。高校生の皆さんに医師という職業に興味を持ってもらい、将来私たちの仲間に加わってほしい。このような願いから職場体験セミナーは企画されました。
 「医師になるためには高校時代にどのような勉強をしたらよいのか?」という質問をよく耳にします。医学は総合的な科学であり、多くの分野の成果を応用することで成り立っています。たとえば抗菌薬を作りだす細菌学者や薬理学者がいなければ、細菌による感染症を治すことはできませんでした。CTという診断機器を開発した物理学者がいたからこそ、現在のように病変を容易に見つけだすことができるようになったのです。ですから高校で学ぶ基礎知識は、医学を学ぶうえで土台となるものです。皆さんにはできるだけ様々な科目に興味をもってほしいと思うのです。
 ひとつ例を挙げてみます。高校の生物の知識をもとに考えてみましょう。先日、70歳台後半の女性が全身のむくみのため入院しました。調べてみると、血液中のアルブミンというタンパク質の濃度が非常に低いことがわかりました。アルブミンの濃度が低くなると血管に水分を集めることができず、むくんでしまうのです。さて、アルブミンというタンパク質はどのようにつくられるか、そのプロセスを考えてみましょう。口から摂取された食物に含まれるタンパク質は胃液や膵液そして小腸粘膜の消化酵素によってアミノ酸に分解されます。アミノ酸は小腸から吸収され、肝臓でアルブミンなどのタンパク質に再合成されます。このプロセスのどこかに問題があればアルブミン合成に支障をきたします。また腎臓から血液中のアルブミンが漏れてしまっても、その濃度は低くなってしまうでしょう。この患者さんの肝臓と腎臓は問題ないことがわかりました。しかしCTを撮ってみると膵臓がひどく萎縮していました。膵臓から産生されるはずの消化酵素が出ないのでは、と考えた私たちは、消化酵素製剤を処方しました。どうでしょう、患者さんの血液のアルブミン濃度はみるみる改善し、むくみもなくなり退院することができたのです。医師がやりがいを感じる瞬間です。
 セミナーでは「血圧測定」や「糸結び」を体験してもらいました。高校生の皆さんが来ると知るや、教官として10人を超える2年次研修医が駆けつけてくれました。「糸結びだけだったら、もう手術室デビューできますよ」と太鼓判を押された高校生もいました。研修医も自分が得た技術を皆さんに伝えることができて嬉しかったのだと思います。同じように、私たちも皆さんが医学生そして医師になった時には、さまざまなことを伝えたいと心から思っています。皆さんと病院で再会できる日を楽しみにしています。

伊勢崎市民病院内科: 小林 裕幸

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